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 再び解熱剤について。5月30日、厚生労働省が「ジクロフェナクは小児インフルエンザなどウイルス性疾患に原則禁忌とする」とした。マスメディアは大きく取り上げなかったが、これは大きな前進だ。

 インフルエンザ脳症との関連が指摘されながら、これまでは脳症になってから「禁忌=禁止」されていたにすぎず、かぜやインフルエンザで熱が出た時は使えた。でも、今回、熱が出た段階で使えなくなった。

 つまり、国は、ジクロフェナクなどの非ステロイド抗炎症剤と脳症発症の関連を実質的に認めて、「解熱にはアセトアミノフェンのみで対処すべきだし、対処できる」と判断したと解釈できる。同じく非ステロイド系のメフェナム酸についても、「小児インフルエンザには使用しない」ことで担当審議会など関係者間で合意ができた。

 それでも、みなさんに「これでもう安心」とは言えない。この連載で言ってきたことに比べると、まだまだだからだ。

 そもそも「原則禁止」とは何だろう。例外的には処方されるということだ。でも、万が一、かぜやインフルエンザの熱にジクロフェナクやメフェナム酸が処方されても、みなさんは飲まないで下さい。

 例えば、今回の措置だと「上気道炎だから」と処方される可能性が残っている。上気道炎には禁止でないからだ。でも、かぜやインフルエンザと上気道炎は、医師でも厳密には区別しにくい。同じ症状に別の病名がつけば、使えることになる。だから上気道炎と言われてジクロフェナクやメフェナム酸を出されても、使わない方がいい。

 それ以外の非ステロイド抗炎症剤はどうか。国は危険性すら認めていないが、重ねて言う。解熱剤を使うとしてもアセトアミノフェン以外はやめて下さい。

 「子どもに禁止」というのも落とし穴だ。大人には解熱剤として処方してもよいということだが、危険なことに変わりない。実際、今回子どもに禁止する根拠とした症例は、43%と半数近くが大人のライ症候群や脳症の例だ。だから大人も非ステロイド抗炎症剤を解熱剤として使うのは避けた方がよい。厚生労働省がやっと子どもには認めたように、アセトアミノフェンだけで対処できるからだ。

薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎