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 コレステロールについても多くの問い合わせをいただいた。

一番気になったのは、C型肝炎の感染者が、コレステロール低下剤を約2ヶ月使った後、発病したのではないかという相談だ。C型肝炎はがんにもつながる。以前、260以上の人が200以下に下げたら、背中が化膿し切開したとの相談があった。低コレステロールと感染が無関係とはいえない事例だ。

循環器の専門医からは、低コレステロールと免疫や感染、死亡増加との関連を示す研究論文を教えてほしいとの質問も受けた。同じ疑問を持つ方も多いはずだ。

関連を示す調査は、ここ5,6年に相次いでいる。

例えば、国民栄養調査の約1万人を14年間追跡した調査では、コレステロールが240〜260の人が最長寿だった。大阪府八尾市で1万人を11年追跡した結果も、240〜280が最長寿。がん死亡の危険は160未満が最大、280以上が最小で、2倍以上の差がある。

コレステロール値の見直しは昨年末、「日本脂質介入試験」という臨床試験の結果が出たことがきっかけになった。220以上(平均で約270)の人ばかり5万人に低下剤を6年間使ったもので、平均50ほど下がったが、最も死亡率が低かったのは220〜280の人。180未満に下がった人は、死亡率が2.6倍だった。がん死亡率が最低なのは280以上だった。

欧米のデータでも、循環器以外のがんと、呼吸器や消化器のたいていの病気、外傷もコレステロールが低いほど死ぬ危険が大きい。また、米国で12万人以上を15年間追跡した調査でも、コレステロールが低いと、入院を要する感染症や入院中に感染症になるケースが多かった。

このように、コレステロールが高いほどがんになりにくく、240〜260程度が最も死亡の危険が少ないというデータは多い。

紙面上、概略だけしか書けないが、医師・薬剤師向けの薬の情報誌TIP[正しい治療と薬の情報」99年6月号に、論文を引用して分析した結果を書いている。一般の人向け情報誌「薬のチェックは命のチェック」2001年2号でも特集しているので、参考にしていただきたい。

薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎