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 糖尿病の初期には自覚症状がほとんどない。早く気づくには検査が大切だ。一般的なのが血糖値。治療がうまくいっているかを知るにも重要だ。

 人はぶどう糖をエネルギー源にして活動するため、血液中に一定濃度のぶどう糖が必要だ。1デシリットル中に含まれるぶどう糖を表す数字が血糖値で、単位はmg/dlで表す。健康人の血糖値は空腹時が60〜100、長時間絶食でも60未満にはならない。食後でも140まで。

 糖尿病と診断する目安は、朝の空腹時が126以上か、食後やぶどう糖を飲んで2時間後が200以上。2度計って、どちらもこの値なら糖尿病としている。この値の人は、数年後に糖尿病の合併症が増えると疫学調査でわかっているからだ。

 基準以下でも空腹時で110以上か、食後が140〜160以上なら予備群である。不摂生は禁物だ。空腹時100〜110にも、予備群が隠れている。100を超えれば、食事や運動に気を配ること。血糖値を甘くみてはいけない。早め早めに生活改善したほうがよい。

 血糖値が高すぎる状態が高血糖、低すぎる状態を低血糖という。どちらも体には不都合だから、正常な体はわずかな上下を敏感に感知して調節している。上げる働きをするホルモンは何種類かあるが、下げるのは膵臓(すいぞう)から出るインシュリンだけだ。

 血糖値が200以下ならすぐに問題はおきないが、250以上になると、細胞は働きが鈍って、傷ついたり壊れたりする。放っておけばインシュリン不足で膵臓自体も弱り、インシュリン分泌が減って、血糖値がどんどん高くなる悪循環に陥る。

 500以上ではぐったりし、昏睡(こんすい)に陥ることもある。この状態は、インシュリン注射でできるだけ早く抜け出す必要がある。数時間から半日以内にとりあえず300以下、できれば200近くまで下げる。

 しかし、その後はゆっくりと下げる。急激に下げると、低血糖症状を招く危険もある。実際、高血糖の人を一気に正常値(60〜100)まで下げると、網膜症などがかえって増えたとの報告は多い。体格と運動量にみあった質量ともバランスのとれた食事を守りながら、正常値よりやや高めを目標に、数週間かけ、ゆっくりと。

薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎