green35_back.gifgreen35_up.gifgreen35_next.gif


   喘息(ぜんそく)の本質が、気管支の慢性炎症と分かって、治療は大きく進歩した。発作を一時的に抑えるだけでなく、粘膜の炎症を抑え発作が起きない状態を保つこと、つまり「予防」に照準が定まったからだ。

 喘息の薬は、大きく分けて発作止め(気管支拡張剤)と抗炎症剤の二つあるが、主役は抗炎症剤だ。その代表がステロイド吸入剤。これを適切に使えば、発作止めの必要量を減らせる。

 そのうえで、炎症の原因になっているものが何か(ダニなどアレルギーを起こすアレルゲン、たばこの煙、大気汚染、化学薬品など)を見つけて、それを極力遠ざけるようにする。

 これで基本的には、喘息はコントロールが可能である。

 さて、発作が起こってしまったら、それを和らげるために使う気管支拡張剤には、主に(1)カフェインの仲間のテオフィリン(2)サルブタモールなどのアドレナリン系薬剤、の二つがある。

 いずれも喘息治療の必須(ひっす)薬だが、テオフィリンは、効き方や必要量に個人差が大きく、使い始めなど量の調節がかなり難しい。現在、拡張剤で最も重要なのは、サルブタモールだ。この薬は、アドレナリンの長所(気管支を広げる作用)を最大にし、その短所(長期、多量に使うと心臓に負担がかかる)を極力減らしたもの。アドレナリンや初期の吸入剤の中に、心臓への刺激が強くて、多量使用で死亡者を出したものがあった反省から開発された。

 ただ、サルブタモールでも心臓への負担はゼロではない。だから、1週間に3回以上(1日3回以上ではない、念のため)、気管支拡張剤を吸入する必要がある人は、気管支粘膜がはれていると考えて、原因を取り除くために炎症対策のステロイド吸入剤を使う。

 抗炎症剤には、ステロイドと効き方が異なる「インタール」吸入も有効でより安全だ。これは、子どもの発作予防によく使う。しかし、飲み薬の抗アレルギー剤はいずれも、ステロイド吸入剤に比べ効果的でない。

 喘息は気管支の病気。同じものなら、飲むより直接働く吸入剤の方が少量でよく効く。

 注意が必要なのは、心臓への影響が少ないと使われている気管支拡張剤にも、問題のものがあることだ。この話は次回に。


薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎