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   喘息(ぜんそく)は、ステロイド吸入剤など抗炎症剤を中心とした適切な治療でコントロール可能だ。それでも、年間5000〜6000人が亡くなっている。

 その中には、薬によって起きる喘息死もある。十分な治療は、適切な薬選びから。発作時に使う気管支拡張剤の選び方や使い方が、命をも左右する。

 気管支拡張剤は、主流のアドレナリン系だけで、吸入用が7種類、飲み薬十数種類がある。もともとアドレナリンは心臓に負担がある。この性質を取り除く努力が重ねられてきたが、まだ刺激が強いものも使われている。吸入で使うなら世界的標準薬のサルブタモール。日本で使われているものでは、ほかにツロブテロールも安全だ。 喘息死を増やすことで問題視されたのは、まずイソプレナリン。今はほとんど使われていない。ここ10年余、議論の中心になっているのはフェノテロール(商品名ベロテック)だ。心臓への刺激が少ない薬として、一時はシェア20%に迫った。

 だが、89年には疑問が出された。ニュージーランドの疫学調査で喘息患者の突然死との関連が指摘され、同国では使用が激減。同時期、喘息死も急減した。日本では96年、学会が喘息死との関連を示唆する調査結果を出し、厚生省が97年、「1日4回まで」などと、緩やかな使用制限措置を講じた。

 べロテックの危険性指摘に対して、メーカーは「使い方の問題」としている。99年度の厚生省の調査でも、喘息死との関連性は証明されなかった。 だが私は、メーカーの示す資料もすべて点検したうえで、ベロテックの安全性には疑問を持っている。マスコミ報道の影響もあり、使用量は現在、一時の3分の1に減った。

 残念ながら、危険性が指摘されても、薬がすぐ使用中止になることはあまりない。だから疑いのあるもの、危険の可能性の高いものは避けるのが賢明といえる。有効性の評価は厳密に、危険性には敏感に、だ。

 繰り返しになるが、喘息治療では、まず気管支のはれを鎮めるステロイド吸入剤を適切に使う。そうやって発作回数を減らし、発作時にはサルブタモールなど安全な気管支拡張剤を使う。それもできるだけ減らす。丁寧に相談に乗ってくれる医師と一緒に取り組んで。


薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎