green35_back.gifgreen35_up.gifgreen35_next.gif


 朝晩の肌寒さが増してきた。鳥肌になり血管も縮む、血圧の高い人には、厳しい季節だ。

 高血圧症は、日本で最も多い病気の一つで、総人口の15%をしめる。脳卒中、心臓病、腎臓病など死につながる病気を知らない間に進行させるものだ。

 そもそも血圧とは、心臓が体のすみずみまで血液を届かせるために送り出しにかける圧力。ふつうは動脈の血圧で、mmHgで表す(以下単位は省略)。

 心臓が収縮している時が血圧は最も高く、拡張している時が最も低い。上が100〜139、下が60〜89程度の人が長生きである。

 血圧は刻々変化する。医師の前で緊張した時、急いで走ってきた時などには高くなる。寒さやストレス、運動時には、交感神経が働き、アドレナリンが出て皮膚血管を狭くし、心臓を早く力強く収縮させ、血液を筋肉にたくさん送りだす。

 長期的には食塩を多くとると血圧が上がる。肥満や甲状腺(こうじょうせん)ホルモンなどの影響でも上がる。

 ナメクジに塩をかけると縮むように、体内に塩が多く入ると水を血管内に引きつけ、血液中の水分が増える。このため体は塩分と水を早く押し出そうとして血圧が上がる。みそやしょうゆなど塩辛いものだけでなく、薄味でも多くとると、塩分がたくさん体内に入るので要注意。

 肥満は皮下脂肪だけなら影響は少ないが、血管の内側の脂肪は血管を狭くし、血圧を上げる。とくに拡張時の血圧が上がりやすい。内臓脂肪が怖いといわれるのはこのためでもある。

 ストレスで上がった血圧は、肩やのどの力を抜き腹式で深呼吸をするとよい。特に吐く息を大きくするのがコツ。本格的な運動後の軽い体操や深呼吸は、運動で上がった血圧を低下させる効果があって合理的だ。深呼吸だけで最高血圧が10や20は下がる。医師の前で血圧が高くなる人は、家で落ちついた時に測ると低く、その方が正確だ。

 正しい血圧を知るには、測る姿勢も大切。必ず座って、血圧計は心臓の高さに置いて測る。分厚い服のそでを丸めてたくしあげたままでは高くでる。

 高血圧症は、日常生活の過ごし方に深くかかわりがある。薬に頼る前に、まず血圧を上げる要因をみつけ取り除く努力を。


薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎