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 高血圧が続くことで、なりやすい病気の代表は、日本では脳卒中、欧米では心筋梗塞(こうそく)だ。

 60年ごろ、日本人の4人に1人は脳卒中で死亡した。

 私も典型的な脳卒中家系、祖父母とおじがこの病に倒れた。祖父はすぐ死亡、祖母は家の中で20年を生きた。おじは数週間の意識不明の後、リハビリで階段を上れるまで快復した。

 脳卒中は80年代はじめ、死因トップの座をがんに譲り渡した。減塩や、栄養がよくなり血管が丈夫になったことと、血圧コントロールが効いたようだ。

 だが、なお死因の第3位。後遺症で、会話や運動など日常生活に障害が残ることも多く、介護が必要な人のトップである。

 脳卒中とは、脳の血管の異常で、脳の働きが障害される状態をいう。よく聞く脳梗塞、脳出血、くも膜下出血……、これら全部が「脳卒中」に含まれる。

 脳梗塞は、欧米では虚血性(血液が途絶える)脳卒中と呼ぶ。脳の血管内で血が固まり詰まる脳血栓症と、心臓などほかの部位の血の塊や脂肪が脳まで来て詰まる脳塞栓症がある。どちらも脳の動脈が詰まり、血管から栄養をもらっていた部分が壊死(えし)し、脳が働かなくなる。

 出血する脳卒中には、脳の内部で起きる脳出血、脳の表面にあるクモ膜という部分の血管が破れるクモ膜下出血がある。

 脳卒中は、ともかく早く病院へ。まひが起こればだれにでもわかるが、片方の手足のしびれ、力が入らないなどの初期症状もある。脳梗塞であれば初期にはCTには写らないが、出血があれば初期から診断できる。血圧が高くなっていることが多いが、急に血圧を下げるのは禁物である。脳卒中は、薬よりも、リハビリをして機能回復をし、後遺症をできるだけ少なくすることが大事だ。

 大切なのは予防。高血圧が続くと脳卒中を招きやすいが、下げすぎもよくない。一時的に血圧が180程度に上がっても、リラックスして深呼吸を10〜20回すればたいてい落ち着く。

 コレステロールにも注意が必要だ。下げすぎると、かえって脳出血や脳梗塞が増える。

 塩分をとりすぎないように、栄養バランスに気をつけて、ストレスを減らし、気長にゆるめに血圧をコントロールする。それが脳卒中の予防には大切だ。


薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎