「いま医薬品を見直そう」 シリーズ

 

  

 

第34回 ライ症候群と解熱剤(5)
      スルピリン、インダシン坐剤も不適切  

  

1999年4月25日

 

 前回から続きの、解熱剤に関する質問への回答を掲載する。

 Q5 スルピリン(小児には成人の3分の1から4分の1)を使っています。問題でしょうか。
 A5 スルピリンはアミノピリン(4-ジメチルアミノ-アンチピリン)のスルホン酸ナトリウム塩。胃(内服時)および肝臓(注射時)で加水分解されて、活性代謝物の4-メチルアミノ-アンチピリンになり作用を発揮します。
 アミノピリン同様、無顆粒球症の危険が大きく欧米では用いられていません。スルピリンはアセトアミノフェンに変更を。

 Q6 ポンタールシロップを幼児に使用しても重篤な副作用は経験していません。有益な薬剤と自信を持っています。専門家も安全と言っています。
 A6 個人の経験や専門家の意見は必ずしも信頼できません。ポンタールシロップは、動脈管開存例に使用して壊死性腸炎(穿孔)も報告されており、厚生省研究班のデータ(TIP誌を引用した本シリーズNo30参照)から、非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)使用者は非使用者よりライ症候群の死亡の危険が二十倍高い可能性があります。動物の感染実験でも高率に死亡し、決して安全ではありません。

 Q7 アセトアミノフェンの少量で十分なら、施設での高齢者にみられる集団感染から(肺炎などで)死亡に至ることなど起こらないはずです。
 A7 インフルエンザによる死亡率が高齢者で高くなるのは、肺炎などの合併症のためです。それに対してアセトアミノフェンが効くなどと筆者が言っているのでないことは、少し記事を読めば分かるはずです。細菌感染症の可能性があれば、抗生物質の適応かどうかを早急に診断し、必要なら抗生物質を速やかに十分投与すべきです(詳細は『抗生物質治療ガイドライン』医薬ビジランスセンター発行1999年=『月刊保団連』臨時増刊号の原本です)。

 Q8 高齢者は発熱が続くと全身状態の悪化する例が多く、やむを得ずボルタレン坐剤やインダシン坐剤を使うとショックを起こすこともあり、対応に困っています。
 A8 全身状態が悪化するのは「発熱が続くから」ではなく、高熱を起こす「感染症が重篤だから」です。
 高齢者も幼児と同様、感染症による悪化に加え、解熱剤の影響で全身状態が悪化しやすいので、注意はこれまでと基本的に同じです。解熱剤で熱を下げて一時的に楽になっても、感染症自体は治癒せず逆に感染症は治り難くなります。
 インダシン坐剤は解熱の適応がなくなって既に十年以上になります。使用しないようにしてください。比較的安全なのは、やはりアセトアミノフェンしかありません。

 Q9 アセトアミノフェンを使用して熱が下がらない場合でも、アセトアミノフェンにこだわらなければならないとすれば、どのくらいの量まで増量できるか。他に代替薬は?
 A9 そもそも、基本的に熱は下げる必要はないし、かえって解熱剤を使用しない方が早く治まることを繰り返し述べているつもりです。したがって解熱の目的なら増量する必要はないし、代替薬も不要と考えます(アセトアミノフェンの日本での承認用量は、大人では一回0,3〜0,5g。解熱目的には原則として一日二回まで、最大でも一日1,5gまで)。

 Q10 アセトアミノフェンにアレルギーの場合、やむを得ずポンタールシロップで体重換算量より少な目を投与しますが、どうすればよいでしょうか?
 A10 解熱剤は基本的に使用しない方がよいのはこの場合も同じですが、痛みで睡眠が妨げられる例には、「鎮痛剤」は使わざるを得ません。この場合NSAIDsもやむを得ませんが、比較的安全で欧米でも承認されているイブプロフェンにすべきでしょう(日本の添付文書には五歳以上、アメリカでは二歳以上の用量記載があります)。