医薬品・治療研究会(代表・別府宏圀)は一九八六年にTIP"The Informed Prescriber"『正しい治療と薬の情報』誌を発刊し、薬剤についての適切な情報作りに取り組んできました。日本の薬の問題の根の深さは並大抵ではありません。調べれば調べるほど、特別な薬だけでなく、日常的に使っている薬にも薬害を生む根が存在するということに気づいてきました。
「くすりのチェックは命のチェック」をテーマに一九九七年九月、第一回医薬ビジランスセミナーを開催したところ、500人もの参加を頂きました。
薬害の反省から入り医薬品の適切な評価をメインテーマとした会は、日本でも世界でもおそらく初めての画期的な試みだったと思います。日本の薬は何が問題で、私たちは何をどうしなければならないのか、何ができるのか、真剣な議論が展開されました。
セミナーでも問題点が指摘された、いわゆる「脳代謝改善剤」は、その後、指摘どおりに大部分が承認取り消しになりました。
ベロテックの使用が半減して喘息死は40%減少しました。「EBM」という用語も、多少問題はかかえながらも普及してきました。
医療現場では、自院で採用すべき薬剤をどうチェックするのか、個々の患者さんに処方してよい薬と、処方すべきでない薬をどう見分けるのか、情報をどのように得て、それをどのようなポイントでチェックするのか、患者向けの情報はどう考えるのか、情報の公開をどのように考えるのか。今、そのことに対する関心がいよいよ高くなってきています。
「今医薬品を見直そう」のシリーズは、チェックの結果をTIP誌に掲載後サマリーしたものです。
1997年でのセミナーではまさしく、この原点となる「くすりのチェックの仕方」を議論しました。その内容は、色あせるどころか、ますますその重要さを強くしています。
セミナーの出席者だけでなく、より多くの人にその内容を知ってほしい。これを参考にしてご自分で身の周りにある薬をチェックしてほしい。その思いを、報告集の出版で実現いたしました。医師の方々にこそ薬を考える際の座右の書として大いに利用して頂きたいと思います。
B5判、総頁数約480頁。〔予価〕五千円(税込,送料別)。
報告集の主な内容 一,基調講演「くすりのチェックは命のチェック」
二、特別講演「科学的根拠に基づく保健医療とコクラン共同計画」Dr N,Hicks
三、薬害の検証(1)サリドマイド、スモン、クロロキン、コラルジル、筋短縮症
四、薬害の検証(2)薬害エイズ、ソリブジン、輸血後肝炎、解熱鎮痛剤、医原性CJD
五、日本の薬剤疫学の課題 六、評価法(1)よい薬と悪い薬の見分け方〔臨床編、動物実験編、安全性〕
七、評価法(2)経済性を加味した評価〔制度、技術評価、薬価の国際比較〕
八、評価法(3)具体例〔抗アレルギー剤、消化器疾患、糖尿病用剤他〕
九、評価法(4)systematic reviewとEBM〔前提、情報収集、吟味、具体例〕
十、評価法(5)日本の薬〔治験レベル、TIP/JIP評価法、94−96年新薬〕
十一、分科会 陣痛促進剤、アトピーとステロイド剤、予防接種、フェノテロール
十二、患者への情報提供と今後の課題 十三、情報公開について |