「いま医薬品を見直そう」 シリーズ

 

  

 

第46回 『消化器疾患治療ガイドライン』 今まで知らなかった知識が随所に
      EBM治療ガイドラインシリーズ第二弾  

  

1999年11月25日

 

『消化器疾患治療ガイドライン』で今まで知らなかった知識が随所にある。ポイントを紹介する。

セカンドオピニオンとして【日本語版への序より】
ベテラン医師には、セカンドオピニオンとして
治療ガイドラインで、自身の処方と比較を
(オーストラリア治療ガイドライン委員会代表、メアリー・ヘミング)
 この治療ガイドラインシリーズは、医師の処方に制限を加えることを意図しているものではありません。
 実際、他の療法が意味のある場合もあるでしょう。経験豊富な臨床医にとっては、このガイドラインで推奨した療法は、有用な「セカンドオピニオン」になると思われ、自身のこれまでの処方をガイドラインと比較してみることが重要ではないかと思われます。
 一方、経験のまだ浅い臨床医師にとっては、このガイドラインで推奨した治療法は、患者の治療を考えるうえでの有用な基礎固めとなると思います。

「Hブロッカーは腎排泄性」【P21より】
腎障害患者では用量調節をきちんと
日本のHブロッカーを丁寧に解説
 Hブロッカーは、H受容体(主として胃の粘膜に存在している)に対する阻害作用が強力である〔H受容体は、このほか、骨髄多能性幹細胞やサプレッサーT細胞などに存在し、感染防御機能などに重要な役割を担っている〕。
 四つの薬剤〔Hブロッカー〕はすべて経口にて良好に吸収されるが、制酸剤と服用すると吸収は低下する。
 四剤とも主として腎排泄性であるため、腎障害のある患者では用量を減量しなければならない〔重症肝障害では有効腎血流量低下で血中濃度が上昇するので、肝障害例でも減量を必要とする。特にラニチジンでは、重症肝障害では二分の一に減ずる必要がある(訳補表A、B参照)〕。
 訳補表A:Hブロッカーの腎機能に応じた用量調節の必要性とその方法
 訳補表B:Hブロッカーを安全に使用するために(TIP誌の表を改訂)

「ミソプロストール」【P27より】
他のプロスタグランディン系抗潰瘍剤は無用
 この薬剤は一種の"妊娠中絶剤"でもあり、妊婦には〔絶対に〕用いてはならない。
〔訳者コメント:日本ではプロスタグランディン系の抗潰瘍剤として、エンプロスチルやオルノプロスチルなどが承認されているが、いずれも力価が弱く(ミソプロストールの○/○程度:どの程度と思いますか?詳しくはガイドラインで)、ミソプロストールのような有効性は確認されていないので推奨できない。
 ただし、妊婦に対する危険はミソプロストール同様にあり、妊婦には禁忌である〕