「いま医薬品を見直そう」 シリーズ

 

  

 

第45回 高血圧治療薬の正しい使い方
      エビデンスが一番そろっている利尿剤とβ遮断剤

  

1999年11月15日

 

 エビデンスのある高血圧治療についてのフランスの提携誌La Revue Prescrire誌の詳細なレビューに基づく推奨療法を紹介する(参考:TIP誌1999年7月号、8・9月合併号)。

ラ レビュー プレスクリール誌の推奨する降圧剤の選択
 この勧告は、適切なエンドポイントで予防効果を示した臨床試験に基づき、有害面も考慮して作成した。主として、脳血管疾患、心腎合併症、糖尿病、収縮期および拡張期血圧による適応と選択を検討した。
 一、降圧剤の適応
 複数回測定して安静時血圧が160/95を超えている場合。糖尿病患者、脳卒中既往歴のある場合は140/80mmHgを超える場合。
 二、糖尿病合併のない成人軽症高血圧症
 利尿剤とβ遮断剤が第一選択。有害面を考慮すれば男性はβ遮断剤、女性は利尿剤。ACE阻害剤は第二選択。カルシウム拮抗剤は最終選択薬剤。
 これらの薬剤群の中で臨床試験で予防効果が確認されたものを使用すること。
 三、65歳以上
 利尿剤が第一選択、β遮断剤が第二選択。これらを低用量から開始のこと。高齢者では体位性低血圧をいつも考慮する。
 四、糖尿病のある高血圧
 ACE阻害剤とβ遮断剤が第一選択だが、ACE阻害剤が血糖値によく、害も少ない。
 利尿剤も第二選択になるが少量にすべき。カリウム値のモニターを要する。
 ジヒドロピリジン剤(註:ベラパミルとジルチアゼムを除くカルシウム拮抗剤すべて)は避ける。糖尿病患者の冠疾患イベント予防のためには、ACE阻害剤より劣る。
 五、他の合併症ある高血圧症に対する第一選択薬剤
・脳卒中後 利尿剤
・心筋梗塞後 β遮断剤
・心不全時 ACE阻害剤
・腎障害患者
 カリウム保持利尿剤とサイアザイドは禁忌
 ACE阻害剤は腎障害進行を遅らせるとはいわれるが、急性腎不全や高カリウム血症の危険あり。注意深い検査値モニターが不可欠。
 六、降圧剤の禁忌を考慮する
 β遮断剤は、非代償性心不全、喘息、重症の下肢動脈疾患の患者に禁忌。
 ACE阻害剤、アンギオテンシンU拮抗剤、カルシウム拮抗剤の一部は妊娠中は禁忌。
 七、効果が証明された薬剤
  長期効果安全性が臨床試験で確認された薬剤
 利尿剤:ベンドロフルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、ヒドロクロロチアジド+アミロリド、ヒドロクロロチアジド+トリアムテレンの組み合わせ
 β遮断剤は、アテノロール(糖尿病患者にもよい結果)、メトプロロール、オキシプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール
 ACE阻害剤で実証されているのはカプトプリルとエナラプリル
 これらの薬効群の降圧剤で、大抵の高血圧患者の治療には十分。
 他の降圧剤は(長期の)臨床試験がない。上記が無効例に限り選択すべき。

WHOの誤った解釈の根拠
 前回に指摘したWHOの謝った解釈の根拠は次のとおり。
 誤りその1 治療目標を130/85mmHgに設定したこと。問題点の根拠は、上記の記事から推測されるが、より詳細はTIP誌(1999年8・9月合併号)を。
 誤りその2 主要な六群の降圧剤をすべて第一選択薬とし、どれを選択してもよいとしている。問題点の根拠は上記より明らか。
 より詳細はTIP誌1999年7月号、8・9月合併号を。