「いま医薬品を見直そう」 シリーズ

 

  

 

第48回 インフルエンザ・ワクチンが効かない根拠を今一度見直そう  

  

1999年12月25日

 

インフルエンザワクチンの質問・疑問に答える
 この冬のインフルエンザワクチン報道は異常だ。
 「インフルエンザでお年寄りが多数が死亡する」「インフルエンザで幼児が脳症になる」「その予防にインフルエンザワクチンが必要だが今年は足りない」と報道されている。
 お年寄りのインフルエンザの重症化や死亡、幼児の脳症にワクチンが効果があるような報道が見られるが果たして本当だろうか。
 山本英彦氏がTIP誌1999年5月号に詳しくレビューしており、筆者が本紙の6月15日号、25日号にそのサマリーを紹介した。
 最近、各地の保険医協会でインフルエンザワクチンのお話しをさせていただいた際に出た質問は、全国の医師に共通する質問・疑問であろうと思われる。
 TIP誌1999年12月号 に詳しくお答えしておいたが、ここでは、その要点を2回にわたり紹介したい。

Q&A-●
Q1:インフルエンザワクチンを注射した人としなかった人を比較した報告では、しなかった人はした人よりも重症化が有意に多い。私の印象でもそう思いますが。
A1:日本の研究はすべてこの方式。ランダム化比較試験ではない。
 ワクチンをした人は、「したい」と思うなど健康意識が強く、普段から、インフルエンザにかからないよう、かかっても悪化しないよう注意をする人が、ワクチンをしなかった人よりも多くなるはず。
 この種の調査では、健康に注意する人と、あまりしない人の罹患率や重症化率を比較していることになり、ワクチンの効果を比較していることにならない。ものの値打ちは比較して初めて分かるが、「何と何を比較しているか」をよく見極めないといけない。

Q2:学童の予防接種では、二回接種者が非接種者より罹患が少なかったではないか。
A2:これもカラクリがある。
 その同じデータで、インフルエンザワクチンは効かないとの結論になり、義務接種が中止になったいきさつがある。非接種者は日頃から休むことが多いため、ワクチン効果の比較にならない。
 前橋市のように学童がほぼ完全接種しなかった市と、接種率が60〜80%の隣接市全体の比較では、全く差がなかった。学校単位で接種率とインフルエンザ罹患率の相関をみても、全く相関がなかった。
(以下、次号に掲載)