「いま医薬品を見直そう」 シリーズ

 

  

 

第49回 インフルエンザ・ワクチンが効かない根拠を今一度見直そう 2  

  

2000年1月25日

 

信頼できない抗体診断●
Q3:今のワクチンは義務接種中止の頃とは別のワクチンではないのか。
A3:今のワクチンも基本的にはその頃と同じ部分ワクチン。

Q4:ワクチンで抗体は確実に上昇するが、それでも原理的に効くと言えないのか。
A4:インフルエンザワクチンでできる抗体はHBs抗体のような完全な感染防御抗体ではないし、感染防御には局所の細胞性免疫の方が重要。原理的にも効くとは考えにくい。

Q5:ランダム化比較試験では、抗体の上昇による診断でワクチン群の方がインフルエンザ罹患率が有意に低かった。これは効いていることにならないか。
A5:ならない。抗体診断で非罹患者が、発熱など臨床症状ではインフルエンザ罹患と診断される例が多数ある。また、インフルエンザの抗体診断は四倍以上の上昇で見るが、ワクチン接種者は、インフルエンザ流行前にすでに抗体が上昇しているので、罹患しても四倍以上上昇することが少ない。このため臨床診断では差がないのに抗体診断では罹患率が低くなる。
 理論的にも言えることだ。だから、抗体診断は信頼できない。

個人レベルでの重症化は防げるか?●
Q6:集団での予防には効かないが、個人レベルでは重症化を防ぐことができるのでは。
A6:重症化の防止というのは、高齢者で肺炎による入院や死亡率を減らすことができるか、小児では脳症を減らすことができるかである。個人個人での効果が分からないから多数を集めて比較試験をする。これで初めて薬(の候補)の効果の有無が判定できる。それが臨床試験である。
 何万人、何十万人もの集団に接種して防ぐことができなかったものが、個人レベルでの重症化を防止できるはずがない。

Q7:インフルエンザ脳症で死んだ子はだれもワクチンをしていなかったと言われる。
 やはり、ワクチンをしていなかったら脳症になりやすいのではないか。

A7:これも根強い疑問。この根拠の間違いを考えてみて下さい。答えは第51回後半に。
ヒント(1)比較する相手を考えて。ヒント(2)症例対照研究の手法を応用して。症例は脳症。対照は? 
Q8 インフルエンザワクチンをしてほしいと親から要望されて、接種せずに、子供がインフルエンザ脳症になったら、訴えられないかと心配だが。
A8 大丈夫。訴えられても負けることはない。むしろ、薬害エイズの原因となった非加熱製剤の時もそうだが、国が許可したものでも必ずしも有効・安全とは言えない。有害で後遺症を残す可能性も考えれば、接種しないという選択も十分ありうる。乳幼児への接種の有効性、安全性の根拠は乏しいので、もしも接種して後遺症が残った場合には、公的被害救済の対象にならない可能性もある。