(2009.12.27号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No140

09インフル 突然死とタミフル
当センターの分析を読売新聞が掲載

NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)  浜 六郎

09Aインフルエンザ(いわゆる「新型」インフルエンザ)における突然死が、タミフル使用と強い関係があるとの分析結果を『薬のチェックは命のチェック』37号(2010年1月発売)に掲載し、インターネット速報版138号で速報しました。

読売新聞

この件に関して読売新聞(大阪本社)が注目され、取材がありました。その後の補足集計結果も踏まえて、この結果が12月27日(日曜日)の朝刊に掲載されました(13面くらし・健康・医療欄:新聞切り抜き)。


薬害を防ぎ、薬を適切に使うための調査研究や情報提供を、10年前から独立した民間団体の立場で続けています(注1)。

インフルエンザにかかった子供どもが睡眠中に突然死する例が相次ぎ、「従来と違う脳症」と、大阪の報告したのを2005年はじめに知りました(注2)。6人中4人がタミフルを服用し3〜7時間後に息絶えていました(注3)。

私は「子供では(注4)異物の侵入を防ぐ脳の機能が未熟なので、薬が入り込み。呼吸中枢が抑制されたのでは」と指摘しました。以来、タミフルと突然死の関係を重視して研究していますが、疑いは深まるばかりです(注5)。

いわゆる「新型インフルエンザ」(注6)ではどうでしょうか。厚生労働省が公表している死亡例のデータをもとに、薬との関係を分析しました(注7)。11月27日までに公表された74人の経過を調べると、「急速に呼吸異常が現れ、意識障害を起こして亡くなる例」(突然型)と「連続的に悪化が進む例」(進行型)の2つのタイプに分けられました。

突然型では54人中36人(67%)、進行型では20人中3人(15%)が、悪化する前にタミフルを飲んでいました(注8)。統計学的に検討してみると、タミフルを服用した場合、進行型でなく突然型で死亡する危険が11倍高まるという計算になりました(注9)。

ただ、死亡例だけの検討では、危険度が高く出すぎるので、軽症者の服用率を推定して比較しました。厚生労働省の検討会に出た資料(注10)では、今年5〜10月に薬を使ったのは計570万人と推定され、同じ時期の推定患者数の約90%、薬の市場占有率を掛けると、推定服用率はタミフル52%、リレンザ38%です(注11)。突然型ではタミフル36人、リレンザ4人、タミフルを飲むと突然死する危険性が4倍高まりそうだ(注12)、という結果になりました。

断定するにはデータが不十分ですが、これは控えめな見積もり。突然死の目立つ発症初期に限ると、軽症者の服用率はもう少し低いはずだからです(注13)。

タミフル服用後、急激に体温が下がったという相談も寄せられています。32度まで下がったこどももいます(注14)。

マウスの実験では、タミフルを与えると急激に体温が下がるというデータがあります(注15)。解熱剤と一緒だと、さらに激しい体温低下が起きます(注15)。この実験からも、薬がウイルスの増殖を抑えて体温がさがるわけではなく、脳の体温維持中枢の働きを押さえ込んだ結果と考えられます。同じ仕組みで呼吸中枢も抑制され、呼吸が停止するのでしょう。

最近、国際研究グループ「コクラン共同計画」により、「タミフルが肺炎などの重症化を防ぐとする十分な科学的根拠はない」と報告されました(注16:速報No139)。これまでは「効果が証明されている」とされ、世界保健機関(WHO)や各国政府が推奨する根拠の一つになっていたのです。

私が示したタミフルの危険性は、海外の研究者に注目されています。メーカーにデータの提示を求め、有効性と害を再検討しようという動きが本格化しています。日本の研究者も、こうした科学的な検証作業の重要性を、十分に認識してほしいですね。

読売新聞の限られた紙面では述べられなかった内容について、注釈を加えておきました。参考にしてください。


市民患者が「ほんまもん」の情報を持つことが真の改革につながる
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