薬のチェック速報版No193(3月31日)でCOVID-19用ワクチン接種後3~4日に死亡した2人の女性がいずれもくも膜下出血による死亡であり、「2度あることは3度ある」、因果関係がありうると発信しました。
厚生労働省(厚労省)は4月9日、その後4人の死亡例の報告を受け、うち2人が女性で、いずれも脳内出血であったことを公表しました。
その結果、女性での出血性脳卒中が短期間に合計4人報告されたことになります。
「2度あることが4度」になったということです。くも膜下出血と脳内出血は、いずれも脳に栄養を運ぶ動脈が破れて出血する病気「脳卒中」で、両者をあわせて出血性脳卒中と呼ばれる致死率の高い重大な病気です。
今回は、より因果関係が高くなったCOVID-19用ワクチンと出血性脳卒中の因果関係に焦点を当てて、速報します。
症例No.3~6は、4月9日厚労省のワクチン副反応検討部会と医薬品副作用調査会の合同部会の資料1-3 および、4月23日の同部会の資料1-3 を参照してください。
(同じ例でも少し追加資料があります)。
なお、医療従事者以外の一般の市民への接種が、一部の自治体において、4月12日に開始されました。
それにともなって、102歳の女性の死亡例が、4月23日の同部会では報告されています。医療従事者については、後述するように、一応、接種者の性別・年齢別構成が公表されていますので、正確な一般人口の死亡率との比較が可能です。
しかし、一般市民における接種者の性別や年齢別構成は不明であり、正確な比較が不可能です。
したがって、今回は、接種時は健康であったはずの医療従事者における死亡例のみが報告されている4月9日の資料1-3に基づいて、ワクチン接種と、 出血性脳卒中との関連を検討します。
4月9日の資料1-4には、以下のまとめの表があります。
ただし、症例No.4の急性心不全は、心臓病死との根拠はなく、単に原因不明の突然死でした。
また、症例No.5は溺死とされていますが、出勤前に自宅で入浴中に浴槽で溺死したものです。解剖で、無呼吸に伴う非左心不全性肺水腫「両肺溺没性肺水腫」が認められたことから、無呼吸発作の結果とされていますが、ハンク・アーロンさんの死亡の機序(速報版No.190参照)と同じと考えられます。
国は、ワクチン接種後の出血性脳卒中死亡率は、0.12件/100万人・日であり、一般人口における出血性脳卒中死亡率0.97件/100万人・日と比較すると少ないので、問題ない、としています(表2参照)。
この比較のどこがおかしいのか、見てみましょう。
まず、最も重要な点は、「健康者接種バイアス」です。これは、本誌に連載した、医学研究の基本の「き」で繰り返し強調した、偏り=バイアス(交絡バイアス)の具体的なひとつです。
4月12日には、自治体によっては一般の人へのCOVID-19用ワクチン接種が始まりましたが、それまでは基本的には医療従事者のみ、つまり、現役で働いている健康な人たちです。具体的にその根拠を以下に示します。一般人口とくらべてみて、どのていど健康なのか、検討しました。
厚労省が示した人口動態統計の死因統計は、死因簡単分類によるもので、この脳内出血には、脳内出血で後遺症のある人が死亡した場合も、脳内出血とされます。くも膜下出血の場合も同様です。つまり、厚労省の一般人口における出血性脳卒中死亡率0.97件/100万人・日の分子となった数字には後遺症の人も含まれています(スライド5~8参照)。
まず、考えていただきたいことは、一般人口のうち、死亡する人は、 出血性脳卒中だけではないということです。脳梗塞(虚血性脳卒中)、心筋梗塞ほか心臓病、肝硬変、がんなど、様々な病気で死亡します。それら、あらゆる原因による死亡率を、総死亡率といいます。
日本の人口は、人口動態統計から、1.23億人で、総死亡者数が1,381,093人です。全人口10万人あたり年間1117人が死亡しています。
一方、ワクチンを接種した医療従事者は、4月4日までに約110万回です(1,096,698回)。
厚労省は、接種後30日間の観察期間としていますが、規定では28日間に死亡した人は因果関係の有無にかかわらず報告することを求めていますが、実際報告された 出血性脳卒中の観察期間は最大9日、他の死因も19日が最大です。また、2回目の接種は基本的に3週間後であり、110万回接種のうち、91万回は1回目の接種者でしたので、20日間の観察として総死亡率を比較します(註)。
接種回数と接種人数は異なりますが、観察期間を考慮に入れると接種回数を用いても次のように接種人年(人日)を計算することができます。1回目に接種しただけの91万人は、2回目(21日目)の接種前ですので、平均16日間観察されたとします。また、2回目接種者が約18万人いますが、これらの人は1回目から2回目までの21日と、2回目以降19日間観察されたとして合計40日間観察されたとします。全体を平均すると、110万人が20日間観察されたのと同じ観察人日(人年)となります。
大雑把に全年齢、男女こみで計算すると、110万×20/365=6万人年となり、ワクチン接種医療従事者の総死亡者数は6人(表1)ですので、10万人年あたりに換算すると10人です。
ワクチン接種医療従事者は総死亡率からみて、一般人口の1117人に比較して100分の1の死亡率ですから、100倍健康だといえそうです。ただし、一般人口の死亡率は、きわめて死亡率の高い80歳以上の高齢者も含めた数字ですので、不公平です。
したがって、20歳から70代の女性の一般人口における総死亡と、ワクチン接種女性医療従事者の総死亡を比較する必要があります。
ワクチン接種者の男女の比率、年齢構成のデータが、厚労省から2月26日に公表されていましたので、このデータ(図1)を用います。
ワクチン接種医療従事者の性・年齢構成はこれが唯一の公表データですので、これを用い、約110万回接種者の20~79歳の女性について、5歳階級別接種回数を推定します。
そのうえで、10万人年あたりの女性の総死亡率を5歳階級別に、一般人口に対するワクチン接種医療従事者のオッズ比を求めてメタ解析し、全体のリスクとして算出します。その結果を図2に示します。
1/0.08=12.5ですので、女性のワクチン接種医療従事者は、同年齢の一般人口の女性に比較して、12.5倍健康だといえます。
臨床試験の結果からは、ワクチンが、総死亡率を増した、あるいは減らしたとの証拠はありません。仮に増やしたとすると、上記は少なめに見積もっているので、ワクチン接種者が一般人口に比較して健康だとの判断には影響はないはずです。
また、ワクチン接種医療従事者のCOVID-19による死亡が減ったとの証拠もありません。したがって、いずれにしても、上記の数字は、かなり信頼できると考えます。
20~79歳の5歳階級別の 出血性脳卒中死亡率を、ワクチン接種女性医療従事者と、一般人口とで比較し、メタ解析して全年齢(20~79歳)で比較しました。
その結果を図3に示します。
25~29歳の年齢層では、単独で危険度が有意に53倍増加していました。
他の死亡が0(ゼロ)の年齢層も含めてメタ解析した結果、オッズ比9.58、p=0.0169と有意でした(異質度I2が40%を超えているので、オッズ比はランダム-effect法を用いた)。
一般人口に比較して12倍健康な集団で、健康度を無視しても、 出血性脳卒中の危険が約10倍増えていました。ワクチン接種医療従事者の健康度を考慮に入れると、9.58/0.080=120ですから、ワクチンを接種した女性医療従事者が、出血性脳卒中で死亡する危険度は、一般人口の約120倍と推定されます。
なお、観察期間を20日ではなく、仮に28日に増やした場合についても計算しておきました。健康度を無視しても6.7倍の出血性脳卒中の危険度があり、健康度が一般人口の17.5倍であることを考慮すると、118倍と推定されました。観察期間を20日にした場合とほぼ同じ結果となります。
薬剤の害を検出するための疫学調査の方法の一つに、Proportional Reporting Ratio(PRR:報告割合比)や、Reporting Odds Ratio((ROR:報告オッズ比)を求める方法があります。その原理を図4に示します。
図4は、死亡例について、死因となった疾患の割合を、関心のある薬剤Aと、すべての薬剤とで比較したものです。死亡例の死因となった害反応(副作用症状)を臓器別にまとめてありますが、個々の害反応症状(くも膜下出血、脳内出血、心筋梗塞など)に置き換えても構いません。図4では、薬剤Aの害反応として報告された例は、脳卒中以外は、他の薬剤による害反応(副作用)報告の傾向とほぼ同じですが、脳卒中だけが突出しています。
脳卒中以外は、他の薬剤による害反応(副作用)報告の傾向とほぼ同じだが、脳卒中だけが突出して、他の薬剤による害反応(副作用)報告の傾向と異なっている ⇒薬剤使用と因果関係がありそうだ。
個々の害反応報告も、医師が「関連がある」と考えて報告されたものであり、軽々しく因果関係がないというべきではありません。しかし、図4の脳卒中のように、全薬剤による害反応(副作用)報告の傾向と著しく異なっている場合は、より強い関連「因果関係」がありそうだ、と考える根拠になります。
具体的計算方法を以下に示しておきます。読み飛ばしていただいても結構です。
この方法で計算すると、
aワクチンを接種した女性医療従事者の総死亡者数は4人で、4人全員が出血性脳卒中で症例しているので、
bは0人です。
このような場合は、オッズ比で表すのが適切ですので、出血性脳卒中死亡のオッズ(a/b)は4/0=無限大です。
一方、一般人口20~79歳女性の2019年の総死亡者数は16,1304人で、
c出血性脳卒中死亡者数が6,647人でしたので、
d一般人口の出血性脳卒中以外の死亡者数は16,1304-6647=154,668人
したがって、一般人口の出血性脳卒中死亡オッズは6,647/154,668です。
a/bが無限大なので、オッズ比は計算できません。この場合は、分母と分子に0.5ずつ足してオッズ比を求め、その信頼区間や、p値はフィッシャーの正確法で計算します。
この方法によるワクチン接種女性医療従事者における出血性脳卒中死亡の危険度は、年齢階級別に求めたオッズ比のメタ解析結果をワクチン接種者の健康度を考慮した場合の危険度(約120倍)と桁が同じです。
いずれにしても、ワクチン接種医療従事者において、出血性脳卒中の危険度は、一般人口に比較して著しく大きいといえます。
くも膜下出血や脳出血は、脳の血管の分岐部に強い圧力がかかり、動脈瘤が徐々に大きくなり、ついには破裂して出血が起こります(図参照)。
くも膜下出血や脳出血は、脳の血管の分岐部に強い圧力がかかり、動脈瘤が徐々に大きくなり、ついには破裂して出血が起こります(図参照)。
表1の症例No.1の人は、日頃から頭痛をよく訴えていたとのことで、ワクチン接種後にも頭痛があり、その他局所の痛みや体調不良のさらなる悪化で、血圧が上昇し、ついには動脈瘤が破綻した可能性があります。
症例No.2の人は、頭部CTで、小脳左半球の小脳橋角部にかけて直径3.5cmの血腫と、その周囲にくも膜下出血の広がりがあり、血腫は動脈瘤の可能性が指摘されています。いずれにしても、ワクチン接種後の様々な不快な症状で血圧が上昇したことで、血管の破綻が生じた可能性が否定できません。
さらに重要なことは、20代の女性約580万人中、2020年1月以来、本年4月21日まで、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)にかかった人は5.5万人で、死亡した人は1人もいません。ところが、ワクチンの接種を受けた20代の健康な女性約15万人中1人が死亡した、という事実です。
今後、医療従事者以外に接種が広がるにしたがって、COVID-19による死亡よりも、ワクチンによる死亡が多くなる可能性が具体的に心配になってくるかもしれません。その可能性がかなり大きいことを、出血性脳卒中死亡の4人の例は示していると考えます。
厚労省が4月9日報告した6人(4月23日には、追加で4人、合計10人)のほかにも、接種後短期間に死亡した人がいるようです。
詳細は不詳ですが、3月19日にワクチンを接種した旭川赤十字病院の46歳の男性職員が、翌日3月20日夜に急変し死亡した、と週刊文春(2021/4/29号p135)が報道しています。この職員は、特に持病はなかったのに循環器系の病気で死亡したとも、報道されています。
旭川赤十字病院の病院長は取材に対して「医者がワクチンと因果関係があるとは思えないと判断したら、報告しなくていいのが今のルール」「国の報告基準に合わなかったから報告しなかった」と返答しています。
しかし、2021年2月26日の厚労省の検討部会の資料2「新型コロナワクチンの投与開始初期 の重点的調査(コホート調査)」の3ページ目には、接種者後28日までの重篤な有害事象(SAE)については、因果関係を問わず報告する、ことが求められています。
厚労省のこの資料では、AE(有害事象)、SAE(重篤な有害事象)について、以下のように説明しています。
「AE(adverse Event)」とは、医薬品の使用と時間的に関連のある、あらゆる好ましくない、意図しない徴候、症状または疾病のことであり、当該医薬品との因果関係を問わない。例えば、ワクチン接種者後に地震が発生して負傷した場合も、ワクチン接種との因果関係にかかわらず、時間的な関連があるために、AEとして扱われる。「SAE (Serious Adverse Event)」は、重篤なAEをいう。
また、同資料の12ページ目には、SAE(重篤な有害事象)とは、
①入院、②死亡又は永続的な機能不全に陥る又は陥る恐れがある場合であって、それが予防接種を受けたことによると疑われる症状。
と記載し、そのうち「因果関係なしと判断した場合」も「SAE報告書」をコロナワクチン事務局に提出を求めています。
注意が必要なのは、SAE(重篤な有害事象)の定義に「それが予防接種を受けたことによると疑われる症状を追加したことは、先の「当該医薬品との因果関係を問わない」という本来のSAEの定義と矛盾しています。
旭川赤十字病院の病院長が、「因果関係がないと判断したら報告しなくてもよい」と判断したのは、この紛らわしい書き方によるものでしょう。
SAEの本来の定義からすれば(また死亡と後遺障害を区別して)、ワクチン接種との因果関係を問わず、
①入院、②死亡又は、③永続的な機能不全に陥る又は陥る恐れがある場合とすべきものです。
その意味で、週刊文春の中で述べている医療ガバナンス研究所の上広昌理事長の以下の指摘は正しいと考えます 「早期に亡くなる方は理由わかがらない場合が多く、因果関係は否定できないため全て報告すべきでしょう。たとえば溺死であっても、ワクチンのせいで筋肉や精神に異常がみられた可能性も否定できないからです。」
さらに追加しますと、ワクチンのために軽い炎症反応があり、睡眠中に低酸素になっても呼吸駆動が働かず、溺死することは、十分に考えられます。