2004年12月17日、アストラゼネカ社1-2)により公表されたイレッサの肺がん患者に対する延命効果をみたISEL試験の結果、イレッサには非小細胞肺がん患者に対する延命効果がないことが示されました。その結果を受け、米国の医薬品規制当局であるFDAは、イレッサの市場からの回収も視野に入れた対応策を検討する旨の声明を出しました3a,3b)。この声明では、現在イレッサを使用中の患者はすみやかに医師に相談すること、代替薬としてドセタキセルやタルセバ(日本未承認)が利用できるとも述べています。
また、欧州では承認申請中のイレッサをEMEA(European Medicine Agency:欧州医薬品局)が承認する見込みがないとして、アストラゼネカ社は承認申請を取り下げたと報道されています4,5)。
これら、FDAおよびEMEAのイレッサに対する取り扱いは、当然の措置であると考えますが、日本においては、イレッサの製造販売メーカー・アストラゼネカ社が、ISEL試験の部分的解析結果を提示し、東洋人(日本人以外)で延命効果が示唆されとの趣旨の主張をし、これを「改善につながることが示されている」とする早まった報道5)もなされています。
このような中、2005年1月20日、厚生労働省内において、このISEL試験をどう解釈すべきかを検討するための会議が開かれます。
NPO法人医薬ビジランスセンターと医薬品・治療研究会は、これまでイレッサの問題を検討してきましたが、今回、これまでのイレッサの毒性試験や臨床試験結果と、ISEL試験を総合的に検討し、検討会各委員と厚生労働省担当者に対して検討すべき問題点をまとめて要望書を提出しました。要望書提出前文とともに、ご参照ください。
私たちの検討結果では、アストラゼネカ社が主張しているような、東洋人(日本人以外)における延命効果の証拠はなく、その可能性はほとんどないと考えられました。
その主な理由は、
毒性試験の結果や臨床試験結果に関してこれまで7-8)私たち(NPO法人医薬ビジランスセンター、医薬品・治療研究会)は薬害オンブズパースン会議9,10)とともに、アストラゼネカ社や厚生労働省に対して要望書や質問状を提出し、使用中止を要請し、また情報開示を求めてきましたが、アストラゼネカ社も厚生労働省も求めに応じていません。
そうした経緯もあり、今回のISEL試験の結果を受けても、イレッサの評価は何ら変わることはありません。私たちがこれまで主張してきたとおり、あるいはむしろこれまで以上に積極的に、イレッサの承認取り消し、販売中止、承認申請データの全面的公開が必要と考えます。
1月20日のゲフィチニブ(イレッサ)問題検討会委員と厚生労働省担当者に対して提出した要望書とその要望書前文はこちら【要望書前文】【要望書】。
参考文献