多くの病気に痛みはつきもの。長期化する痛みは、放置すればさらに痛みが増し、慢性化し、精神的、社会的に悪影響が加わり、痛みの悪循環に陥ります。このため先制治療が必要です。
一方、発熱は重要な生体防御機能の一つであり、解熱剤の使用は一時的苦痛の軽減と、解熱で感染防御機能や組織修復機能を抑制することによる害とのバランスを考慮することが必要でしょう。
原著の内容は、痛みおよび発熱の最新の病態生理学的知見やランダム化比較試験の結果に基づいて鎮痛治療の原則を記述。とくにモルヒネについては WHOの段階的治療指針を超える具体的・実践的使用法を解説しています。また、陥りやすい落とし穴、注意しておくべき事項が豊富に記載され、選択薬剤が具体的に記述されています。
訳補として、原著にはなかった「解熱剤としての非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)使用の問題」「癌治療時のH2ブロッカーによる精神障害」をオーストラリア治療ガイドライン委員会の了解を得て加えました。解熱剤としての非ステロイド抗炎症剤とアセトアミノフェンとの有効性と安全性の重大なちがいはTIP誌にもまだ掲載していない内容です。鎮痛剤治療中の精神症状の発現も、TIP誌ではまだ詳細には扱っていませんが、重大な問題です。これら2点は問題の大きさ深刻さのため、ガイドラインに通常必要な情報以上に踏み込んで詳述しました。