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書評コーナー

薬のチェックは命のチェックで取り上げた書籍を紹介しています。

季刊誌11号より

世界医薬産業の犯罪

ハンス・リューシュ著/太田 龍訳 三交社

世界医薬産業の犯罪

原著は1982年発行(日本語訳は1993年初版)だが、古さは感じさせない。 "医者はストライキをせよ"では、1973年にイスラエルで起こった29日間の医者のストライキのことが紹介されている。「この期間、死亡率が空前絶後の低さであった」とのこと。 "医学シンジケートの組織"では、「製薬産業が医学界を取り仕切っているというのが実情であろう。医師たちは製薬会社に、こづき回され、金銭でつられ、すっかり専門職としての自己規制を失ってしまっている。しかし不適切な薬の処方の結果、引き起こされる悲劇に対し、医師たちは全責任を負うべきである。産業界の唯一の目標は利潤の追求なのであって、彼らの倫理観の欠如を糾弾するのはフェアとは言えない。責任は明らかに、専門職たる医師の側にある。今や医師というものが、製薬産業からの指示と命令を仰ぐだけの下僕になり下がっており、まだ専門職と呼べるかどうか、そこが問題ではある。」と、日本の現状をぴたり言い当てている! "貧しい国からの搾取"では、1973年9月11日(これも別の9.11!)にクーデターによって倒されたチリのアジェンデ政権のことが書かれている。アジェンデ大統領自身が医師で、彼が指名した薬事委員会が「治療効果が立証しうる薬品は20?30種類しかなく、処方薬は削減されるべきだ」という答申をまとめた。ところが、アジェンデ政権を倒した軍事政権は、この薬事委員会のメンバーのほとんどを暗殺したという。必須薬を広めるのも命がけ?(き)


■単行本: 357ページ/¥2,718 (税別)

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