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書評コーナー

薬のチェックは命のチェックで取り上げた書籍を紹介しています。

季刊誌17号より

医学者は公害事件で何をしてきたのか

津田敏秀 / 岩波書店

医学者は公害事件で何をしてきたのか

本誌14号の書評で取り上げた『市民のための疫学入門』の著者である岡山大学の津田氏が御用学者を糾弾する本を書いた。主に批判の対象となったのは井形昭弘氏(元鹿児島大学学長)。疫学の知識ゼロの人物が水俣病の"権威"となり、判定基準を作り、政治"解決"に導いたその功績で退官後も国立中部病院院長や、事件や不正を起こした医師や歯科医師の行政処分を審議する厚生労働省の審議会である医道審議会の会長(!)を歴任する。水俣で開催された国際水銀会議で教育講演を行うも、質問を受け付けず、警官に守られて退場したとのこと。井形氏に限らない。「何べん来てもけるものはけるのだという悪代官に徹する以外にない」「堂々と書面で主張したことを、ここで、それはうそだったとも言いにくい」「開き直る以外にない」など"学者"たちの発言を読むと、この国に生まれたことの不幸を嘆きたくなる。カネミ油症事件では、評者が大学時代に講義を受けた教授も批判されており、ひと事ではない。(き)


■A5版:256ページ/¥2,600 (税別)

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