安藤直子著/子どもの未来社
■A5版 223頁/価格1600円(税別)
前半では、アトピー患者であり、生命科学者である著者の長年にわたるアトピー遍歴が述べられています。 (本誌31号インタビューを参照)。その後、成人アトピー患者1000人を対象とする実態調査の結果を紹介。 病歴、症状、薬剤、患者自身のアトピー観、社会・家庭生活などについてまとめられています。
そこから見えてくるのは、医療者や世間が抱くアトピーへのイメージと、患者の実体験との大きなズレ。 例えば、医師の中には、ステロイド中止を試みる患者を、マスコミやアトピービジネスに振り回されている、と批判する人がいます。 しかし調査では、中止理由のトップを「何らかの異常・副作用」が占め、マスコミや民間業者の影響はわざか5%ほど。 著者は、患者が抱えるステロイド剤への不安感は、「思いすごし」や「戯言(ざれごと)」ではなく、 鋭い感覚で連続的に観察した結果だと言います。また、8割近い患者が医療に「心のケア」を求めている一方、 約6割が医療現場で傷ついた経験を持っています。
「社会全体がアトピーと再度向かい合う」。豊富な情報と、患者さんや家族、医療者、そして 社会へのメッセージが詰まっています。(な)