雨宮処凛・萱野稔人 (著) /光文社新書
■価格760円(税別)
1998年以降自殺者数は毎年3万人を超え、うつ病などの精神障害と診断される人も増えている。 本書は、「生きづらさ」を感じてきた二人が対談形式でそれを論じている。
人間はもともと他者から承認されて自分の存在価値を証明する。今の社会では、 場の空気を読まなければ周りから認めてもらえず、新自由主義的な「自己責任」の圧力もあって、 生きている意味がないと思わされてしまう。派遣労働者は取り替え可能な部品扱いされ、 貧しい国の外国人たちと競争させられ、唯一のよりどころが「日本人であること(愛国)」につながりうる。
他方、職場いびりや解雇を受けた人たちが、自分を支えてくれる人を見つけて立ち上がり、 会社と交渉する過程で、生きづらいのは自分たちのせいじゃないと気づき、自己肯定感を取り戻そうとしている。 賃金や社会保障などのセーフティネットを緻密にし、生きていくための希望をもてる環境を求めていくこと、 そして、一人一人の抱える「生きづらさ」をそのまま受け入れて肯定しあえる人間関係を作り上げていく 地道な作業をすることが、心身の健康や命を守るためにぜひとも必要なことだと思う。(う)