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書評コーナー

季刊誌34号より

医者と患者と病院と

医者と患者と病院と

砂原茂一(著)/岩波新書
 ■228頁/価格740円(税別)


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医師のほとんどの人が倫理的に小さい頃より優れていたわけはありません。 そんな人たちが医学部に合格し、6年間の勉強をし、国家試験に合格すれば医師免許を貰い、 突然「先生」と呼ばれるようになるのです。しかし、「先生」と呼ばれ、白衣を着て病院を闊歩している姿は、 何か特別な権威を持っているようなイメージを抱く人が多いのではないでしょうか。 この、「権威」の源とはなんなのでしょう。

本書はこの医者の権威を「知的権威」「道徳的権威」「カリスマ的権威」と分けて分析し、 その本来の在り方を考えています。医者という仕事の特殊性(これも権威主義に侵された結果の言葉かも知れませんが) からか、自分も医学生としていつの間にかこれらの権威に寄りかかりつつあったことに気づかされました。 ほかにも、本書は医学というものの不安定さや、その積み重ねの歴史、それに対する詩人や作家、 物理学者の嫌悪感を紹介しながらも、患者に知ってもらうことによって得られる、パートナーを組んで 病気に立ち向かうという、これからの医療を考察しています。 25年以上前に書かれた本ですが、指摘される問題点はまだまだ解決されていません。(く)