医薬ビジランスセンター(NPOJIP)へようこそ

書評コーナー

季刊誌35号より

ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ ハイテク海洋動物学への招待

ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ ハイテク海洋動物学への招待

佐藤克文著/光文社新書
 ■新書 価格840円(税別)


こちらから購入できます


私たちが信じてきた科学の常識は、日々書き換えられているといっても間違いないでしょう。 本書は、ハイテクの進歩によって得た南極の生き物の生態を通して、人類がどれだけ想像や思い込みを信じ、 それによって誤った行動をとることが多いかを教えてくれます。

標題にあるように、主の大きさによって異なると考えられていた海洋生物の泳ぐスピードが同じであったとか、 測定によってこれまで定温動物と思われていた鳥類がそうでなかったり、変温動物とされていた爬虫類が 定温動物の様相を示したり。アザラシなど氷に閉ざされた動物本来の正則環境下からの報告は、 その生態を生き生きと伝えてくれます。動物好きの人ならずともおおいに知的な悦びを与えられると思います。

著者は、祖母から「お前の研究は世間様の役に立つのか」と問われ、一瞬絶句したそうですが、 役に立たない研究などありません。私は本書から、私たちの身近にある医学や薬についても、 常に常識や国の発表を疑い、新しい知識に対してアンテナを立て、誤った行動をしないよう心がけなければ ならないことを学びました。(は)