西川 勝著/岩波書店
■13.5cm X 19.5cm 209頁 価格2300円(税別)
著者の西川さんには第6回医薬ビジランスセミナーの分科会「生命倫理」で講師を務めていただいた。ある雑誌での 彼の発言に非常に共感し、学ぶものがあると思ったからだ。本書は1999年から2005年にかけてさまざまな医学関連雑誌に書いたものを まとめたものである。冒頭を引用してみよう。
「いま、ぼくの人生をパタンと二つ折りにしてみると、ちょうど折れ目のところに精神科閉鎖病棟で勤務していた 日々が現れます」。高校卒業後、ジャズ喫茶で働きながら、生きることを手探りしていた著者は、看護婦の母の勧めで見習い看護師になる。 看護学校に通い、大学の夜間部で哲学を学び、病院で患者さんと向き合う。その後、人工透析病院、老健施設などを経るのだが、 哲学と看護、臨床哲学を軸に話は進む。
病を理解することと納得すること、プライバシーと言う言葉が持つ負の話、工夫や努力では身につけられない 「偉大なマンネリズム」とも呼べるケアをする70歳の看護婦さんに見出した看護の技術、「鬱」と「鬱病者」との区別など 汲みつくせない話に溢れている。わたしは何とうすっぺらな看護をしてきたのだろう、と父を思った。(さ)