李 漢栄著/六然社
■13cm x 19cm 152頁 価格1500円(税別)
帯にある「リー先生、それでは困るんだ!」は、著者が前立腺肥大症の内視鏡手術後の抗生物質使用が 無意味であるというデータを出した際に、著者が指導医から浴びせられた言葉である。
この本の凄い点は、このような事例を挙げる際に実名で書いていることである。 実名をあげての批判というのは日本では珍しいが、実名でないと迫力がないのである。 日本の泌尿器科医で、日本泌尿器科学会にも所属せず、同会の専門医資格も持たない(おそらく)唯一の 泌尿器科医であろう。したがって、何らのしがらみもなく、学会や権威を遠慮なく批判できる。
副題にもなっている“PSA検診”に関しては10ページが割かれているだけだが、 最新の論文を紹介しながらPSA検診は無効と言い切っている。日本泌尿器学会内で細々とPSA検診を 批判してきた評者としては、強力な援軍を得た思いである。その他にも、癌検診╱癌治療全般を 批判しているし、抗がん剤が効かない理由をわかりやすく解説している。薄い本ではあるが、1500円の 価値は十分にある。(き)