福岡伸一著/文藝春秋
■13.5cm x 19.5cm 238頁 価格1200円(税別)
「生物と無生物のあいだ」「動的平衡」などの著作で知られる分子生物学者の福岡さんが、 週刊文春に連載中のコラムをまとめたものである。
“放蕩息子の帰還”では、福岡ハカセが、風邪をひいた時に「おかえり」と風邪のウイルスに呼びかける。 読み進むと、読者はウイルスの巧妙な秘密を知ることになる。“健全なる懐疑心を!”では、 霊能者のインチキを例に健全なる懐疑心を磨くことを推奨している。“臓器移植法改正への危惧”では、 無理矢理新しい臓器をはめ込まれると、動的平衡は大きく攪乱される。さらに、拒絶反応を抑えるために 免疫抑制剤が使われることにより、動的平衡は二重に干渉を受けると問題点を明らかにする。 「花粉を止めたい!」では、抗ヒスタミン剤を例に、薬物療法の限界を語る。 抗ヒスタミン剤が投与され続け、内部の信号がブロックされ続けると、動的平衡は必ず押し返してくると述べている。 これはすべての薬物療法に当てはまる真理なのではないだろうか?
生命科学が楽しく学べる一冊である。(き)