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書評コーナー

季刊誌40号より

大都市のひとり暮らし高齢者と社会的孤立

大都市のひとり暮らし高齢者と社会的孤立

河合克義著/法律文化社
 ■21.4cm x 15.4cm 373頁 価格5400円(税別)


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本書は高齢者の餓死、孤独死防止の目的で行われた、東京都港区での1995年調査と2004年調査、 横浜市鶴見区での2006年調査の3つの大規模調査の報告をまとめたものです。

孤立問題の発生要因についての議論がさまざまな角度から多数行われており、 家族・親族ネットワークと地域ネットワークの脆弱化をあげ、家族・親族ネットワークの強化、 地域での見守り・支えあいが政策的に注目されています。著者は、人間関係の希薄化の背景に踏み込み、 ひとり暮らし高齢者の基本的特徴を把握、類型化し、不安定層、一般層、安定層の3段階に分けて生活実態を見たところ、 孤立状態にある者でもそれぞれの層で問題状況が大きく異なることが明らかになりました。たとえば、 緊急時に支援者がいない人は不安定層に多く、安定層に少ないことなどです。

著者は住民運動ではできないことを指摘し、命を守る責任は国・地方自治体にあると力説しています。 介護保険制度によって権利になったはずの高齢者福祉が行使できない階層があることを行政は無視しないでほしいものです(は)