■岩田健太郎/光文社新書
■ISBN-10: 4334035981
■ISBN-13: 978-4334035983
■17.2 x 10.8cm 217頁 価格740円(税別)
2009H1N1 騒動の際、当時の桝添厚生労働大臣のブレーンを務めた岩田健太郎氏(感染症専門医)の新著です。
予防接種で副作用が生じた場合、医療者や厚労省の責任を追及するのではなく、全ての関係者が 道義的な責任を共有し原因を突き止める姿勢が大切だと著者は説きます。しかし、副作用(害)の原因を 突き止めることは、それが引き起こされた経緯を明らかにすることであり、だれに、どの組織に、 どのような責任がどの程度あるのか、という視点と切り離すことはできません。これを曖昧にして関係者すべてに 道義的な責任を分散させる岩田氏の立場は、予防接種の副作用や薬害などを二度と起こさないとする立場からは ほど遠いと言わざるを得ません。
さらに被害の回復についても、岩田氏は「まなざし」や「配慮」という判断困難な表現を用います。 しかし被害者にとっての被害の回復とは、自分たちの味わった被害や困難が後世に生かされることではないでしょうか。 「一億総懺悔」の言葉の下、戦争責任をあいまいにした日本政府の姿とだぶります。(み)