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書評コーナー

季刊誌46号より

ひとはなぜ乳房を求めるのか 危機の時代のジェンダー表象

ひとはなぜ乳房を求めるのか

■山崎明子、池川玲子、新保淳乃、千葉 慶、黒田加奈子著/青弓社ライブラリー
 ■ISBN-10: 4787233289
 ■ISBN-13: 978-4787233288
 ■13.5cm x 19.5cm 213頁 価格1600円(税別)


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本書の存在は、雑誌「映画芸術」の書評で知った。というのも、全5章のうち、日本映画における乳房の役割を論じた章と ポルノ映画のレイプ神話を論じた章と、映画と関連する章が2つもあるからです。また、ベストと乳房の関係を論じた章も 目からウロコの発見でした。

しかし、「映画評論」の評者も、そして私も最も興味を持ったのは、ピンクリボンキャンペーンをポスターデザインの視点から 斬った第2章でした。収録された12枚のポスターは、著者が指摘するように、いずれも“いつ誰が乳がんにかかるかわからない” という不安をかき立てる脅迫的なメッセージを伝える目的で描かれたことがよくわかります。

また、乳がんのチャリティー行事として女性写真家が撮った女性タレント10人のヌード写真集には、 1人も乳がん患者は含まれておらず、伝えるメッセージは“乳がんではないのが美しい”なのです。 美しい身体のネガは“病む身体”であり、これらはキャンペーンのなかでは決して視覚化されないという指摘は鋭いものがあります。

乳がん検診の有効性の議論以前に、乳がん検診キャンペーンには大きな問題があることを知らしめる良書。(き)