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書評コーナー

季刊誌46号より

仏教、本当の教え —インド、中国、日本の理解と誤解

仏教、本当の教え

■植木雅俊著/中公新書
 ■ISBN-10: 4121021355
 ■ISBN-13: 978-4121021359
 ■228頁 価格800円(税別)


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地位も名声も富も親も妻子も棄てて、生を模索したブッダに、思春期の私は恐れ多くも(?)共感し、 仏教を学びたいと真剣に思った。だが、身近にある仏教は受け入れがたく、いつしか忘却の彼方へ。 本書を手にしたのは、帯の「壮大な伝言ゲームの果てに」の文字に引かれたからだ。

ブッダは徹底して平等を説き、迷信や占いやドグマなどを徹底して排除したのだという。 女性を差別するどころか、夫は妻を尊敬し、自立を認め、財産を与えよ。など「妻への五つの奉仕」を教えている。 ところが、これが男尊女卑の中国で「妻が夫に仕うるに五事あり」と全く逆の漢訳になった。

漢訳する段階での改ざん、改変、あえて意味不明にして呪術性を持たせるなども。 日本では漢文のままの仏典を輸入し、意味不明であることが庶民にはありがたがられた。 「ぎゃてい、ぎゃてい、はらぎゃてい、はらそうぎゃてい、ぼじ、そわか」 という呪文めいた文言を耳にしたことはないだろうか。意味は「往き往きて、彼岸に到達せるさとりよ、幸いあれ」なのだという。

音写である漢字にも何か意味づけしようとし、ブッダの教えから日本独自の仏教へとどんどん変貌してゆく。 まさしく「壮大な(意図的)伝言ゲーム」。(さ)