医薬ビジランスセンター(NPOJIP)へようこそ

書評コーナー

季刊誌49号より

「縮み」志向の日本人

「縮み」志向の日本人

■李御寧 著 /講談社学術文庫(2007)
 (原本は1982年、学生社刊)
 ■ISBN-10: 4061598163
 ■ISBN-13: 978-4061598164
 ■14.4 x 10.4 x 0.8 cm 352頁 価格1000円(税別)


こちらから購入できます


著者は「甘え」の概念を例にとり、西洋との比較で日本文化の特殊性は論じられないと立証することから始めている。 確かに、中国文明の影響を日本と同じく受けつつも中国の一部とならなかった韓国の文化と比較することで、 日本文化の特徴が浮き出てくるという著者の主張は説得力がある。

著者は、扇子に関する緻密な考察から盆栽などの「小さくまとめる」「縮み志向」の日本文化を描く。 日本経済を支えたトランジスタなどミニ電気製品は、現代に現れた「縮み」文化の優れた成果と続く。 「なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし」と枕草子にあるという指摘にも合点がいく。 「縮み志向」は日本社会の様々な面に現れる。その典型が“自粛文化”であり、「臭い物には蓋をする」もその一例であろう。 日本人なら、著者が挙げていない「縮み文化」を他に幾つも思いつく。こうしてみると、「縮み」志向は良くも悪しくも日本文化を表している。 日本文化論としてはベネディクトの『菊と刀』が有名である。李御寧の『「縮み」志向の日本人』は、『菊と刀』に匹敵する日本文化論と言える。 「それって、違うんじゃない」というあら探しも含めて一読を楽しまれたい。(た)

世界一の長寿国でありながら、健康不安が高い日本人に対して著者は言います。 健康診断の厳しすぎる基準値によって「病人」に仕分けられる人が多いからではないか。(み)