医薬ビジランスセンター(NPOJIP)へようこそ

書評コーナー

季刊誌49号より

戸籍って何だ「差別を作り出すもの」(プロブレムQ&A)

戸籍って何だ

■佐藤 文明 著 /緑風出版(増補改訂版 2010年)
 ■ISBN-10: 4846110028
 ■ISBN-13: 978-4846110024
 ■21 x 13.6 x 2.2 cm 264頁 価格1900円(税別)


こちらから購入できます


著者は、元某区役所の戸籍係。その経験が本書を含めた戸籍制度を検証する多数の著作につながっています。

夫婦と未婚の子をワンセットにすることを前提とし、個人の身分変動(結婚・離婚や転居など)を 生涯にわたって記録し、外国人を排除することによって国籍登録も兼ねるなど、戸籍の持つ特徴は、これまでの日本社会が 当たり前としてきた家族観や単一民族国家観に大きな影響を与えているのです。

かつて評者は母が亡くなった折、相続関係で母の戸籍謄本類をその出身地の役場から取り寄せ、 それらに記された一番古い年号に驚愕した記憶があります。そこにはなんと「慶応」(つまり江戸時代!)と書かれてあったからです。 同時に祖父が婚外子であったことも知りました。戸籍は外国人差別、婚外子差別、部落差別などの差別を生み出す 根源となっているという本書の指摘に、大きく頷きます。

にもかかわらず、2008年までは、「原則公開」だった戸籍。いったい誰のための制度なのか。 本当に必要な制度なのだろうか。ふつふつと湧いてくる疑問の数々の答えを見つけるためにもおすすめです。(み)