■内田 良著 /河出書房新社
■ISBN-10: 4309246230
■ISBN-13: 978-4309246239
■18.7 x 13.2 x 2.6 cm 256ページ 価格1500円(税別)
本誌51号の「行ってきました」で紹介した本である。帯には“29年間で118名の中高生が学校柔道で死亡。 なぜこの暴力的文化が放置されてきたのか”とある。筆者が訴えていることは、“柔道が危険なのではない”、 “柔道事故に対する無関心な態度が柔道を危険なものにしてきた”、“日本の柔道が危険”、なのである。実際、日本の3倍の柔道人口を誇る柔道大国フランスでは、 2005年からの6年間でこどもの死亡事故は0である。
本書はエビデンスに基づく書籍であるので、図表が非常に多い。公表されている無味乾燥な生データを、可視化した著者の努力に 敬意を表したい。その多くのグラフの中でも、中学校でのスポーツ別の死亡率のグラフには衝撃を受ける。死亡率2位のバスケットが10万人当たり 0.382人なのに対して、1位の柔道は2.385と圧倒的に多いのである。
データを駆使するだけでなく、言葉の使い方に厳格なことも特筆に値する。“価値を多分に含んだ「体罰」という言葉を用いるのをやめて、 「暴力」という行動レベルの語によって何が起きたかを具体的に記述する”べきだ、と述べている。「子曰く、必ずや名を正さんか」の精神である。(き)