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書評コーナー

季刊誌53号より

アノスミア わたしが嗅覚を失ってから取り戻すまでの物語

アノスミア わたしが嗅覚を失ってから取り戻すまでの物語

■モリー バーンバウム (著), Molly Birnbaum (原著), ニキ リンコ (翻訳)/勁草書房
 ■ISBN-10: 4326750510
 ■ISBN-13: 978-4326750511
 ■19 x 12.8 x 2.6 cm 338ページ 価格2,400円(税別)


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あなたは「におい」を言葉であらわすことができますか?ソムリエがワインの香りを表現するとき、香りそのものをズバリ表現する 言葉はないのでは?と気づきました。原書は英語ですが日本語にも「におい」を表現する言葉は、さて、あるだろうか?最近私が気になった「におい」 は「グラスに重口の赤ワインを注いでクルッと回したときの香り」みたい、でした。どうやらそれはケトン体のにおいらしいのですが。

生活から「におい」が消えたら・・・想像してみてください、おもいっきり想像力を働かせて。ビールも香りです。 ホップに苦味だけではない。肉の焼けるにおい、ご飯が炊き上がってくるにおい、カレーのにおい。飲食が味気なくなるだけではありません。 嗅覚がないことは生命をも脅かします。腐っていてもわからないし、火事の煙のにおいもわからない。

シェフを目指していた著者は、ある夏の日、交通事故で突然に嗅覚を失ってしまう。なあんにも、におわない。 外傷は治っても目に見えない嗅覚喪失は治らないし、周囲は理解しづらい。うつうつとした日々のあと、著者は嗅覚を調べ始めます。 著名な科学者にも、詩人にも、問う。「におい」とは? 本書は科学書でありノンフィクションです。(さ)