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書評コーナー

季刊誌54号より

医学的根拠とは何か

医学的根拠とは何か

■津田敏秀 (著)/岩波新書
 ■ISBN-10: 4004314585
 ■ISBN-13: 978-4004314585
 ■17 x 10.4 x 1.6 cm 190ページ 価格720 円(税別)


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臨床試験の担当医師たちがじつは統計や疫学にうとく、データの解析や判断はメーカーに丸投げしていたという降圧剤のデータ改ざん事件を上げるまでもなく、 日本のいわゆる医学専門たちは、医学的根拠に基づく検証や判断が、できない。できないのにできる振りをし、行政はそれをもとに「医学的根拠は十分ではない」として、 常に適切な判断を逃れてきている。

どの章、どの項目から読み始めてもいいが、医学や薬学の知識にうとい読者には、第3章「データを読めないエリート医師」 が入りやすいだろう。O-157による大規模章中毒で「犯人は貝割れ」とされた事件を例に、「専門家」がじつは何も知らないこと、 いたずらに時間とお金を浪費するだけの調査しかできないこと、などがわかる。

こういうやり方は、水俣病などの公害でも、数々の薬害でも、そして福島でも、性懲りもなく繰り返されてきている。 疫学を知らない「専門家」が受動喫煙に関する裁判で「疫学者」として法廷に立ち、「疫学研究の結果のみで特定の個人における因果関係の判断を 行うことは不適切です」と、被告タバコ産業に有利な証言をする。医学的根拠の混乱を招く発言をしてきた(している)医学者・研究者 たちが実名で何人も登場する。(さ)