【重篤な反応が問題となる理由】
ある薬に重篤な害反応を生じるとしても、代替薬がないか、害反応を未然に予知する手段(軽い副作用症状や簡便な検査など)があれば、使用を全面的に中止することはない。
テルフェナジンの場合はどうか。 まず、鎮静性抗ヒスタミン剤(第一世代の抗ヒスタミン剤)の過量で出現する眠気や口渇など、軽い副作用がテルフェナジンにはほとんどない。このことをむしろ特徴とし、このためマレイン酸クロルフェニラミン徐放錠の二十三倍の価格がついている。
軽い副作用がほとんどないために、過量になっても医師も患者も過量であることに気づかず投与を続けてしまい、起こる時は、突然、死亡するかもしれないような重篤な害反応が生じてしまうのである。
次に、テルフェナジンの適応症は、たかだか、花粉症による鼻汁やくしゃみ、ジンマシンによるかゆみなどの症状を軽減することである。
このような軽い適応症に比較して、害反応の重篤さは許容し難い。ただし、鎮静性抗ヒスタミン剤が禁忌の緑内障や前立腺肥大などの患者には、非鎮静性抗ヒスタミン剤が一つはあってよい。これにはテルフェナジンよりは比較的安全性が高いと考えられるアステミゾール(ヒスマナール)が残されている(TIPの検討結果は六月号に発表)。
【問題の価格と使用期間】 テルフェナジンの「気管支喘息」に対する抗アレルギー作用は、「全般改善度」を指標として判定されたもので、真の有効性や安全性は証明されていない。しかし価格は、マレイン酸クロルフェニラミン徐放錠(1日13,4円)の23,3倍(1日312,8円)である。
鎮静性抗ヒスタミン剤の最大投与期間二週間に対して、テルフェナジンは、三十日使用できる。これが、三〜四カ月持続する花粉症などにも長期処方可能な本剤が好んで使用される傾向を助長している。
【結論】 テルフェナジンの適応症の軽さと代替薬剤の存在に比較した、害反応の重篤さやその予測不能性、すなわち危険/便益比の大きさは許容し難いものである。したがってテルフェナジンは中止すべきである。
参考文献 医薬品・治療研究会、TIP「正しい治療と薬の情報」(12・No.3・1997) |