「いま医薬品を見直そう」 シリーズ

 

  

 

第24回 疑問に答えて(上)
      「フルクトース、キシリトールは危険」

  

1998年9月15日

 

【全国から寄せられた質問、意見】
 「フルクトース キシリトールは危険」の記事(七月十五日付)には、全国から多数のご質問、貴重なご意見を頂いた。
 最も多い問い合わせは、「フルクトースやキシリトールが危険となれば代替品として何を使用すべきでしょうか」と、歯科医師から「虫歯予防のキシリトール入りガムやあめは問題ないか」というものである。
 最も厳しいご意見は、「本当に危険でしょうか。常識的にはにわかに賛同しかねます。薬理学会、生理学会、輸液学会の一般的意見はどうでしょうか。一学者(?)が、特異な投与法によった結果が危険だったとしても低濃度を適当な量使用しているのを、使用禁止、製造中止と言うべきでしょうか。文章(論文)に対する責任は執筆本人は当然のこと、編集・出版者にも、一応容認したのだから、責任の一端はありましょう。」と、執筆者と編集者の責任を問うものであった。

【欧米の教科書では共通認識】
 7月15日付け記事の末尾にも書いたが、高カロリー輸液および高カロリー輸液に使われているキシリトールやフルクトースに関する詳細な内容は、筆者が編集に携わっている医薬品・治療研究会発行のTIP誌『正しい治療と薬の情報』一九九七年七月号に述べている。
 このTIP誌の記事は、以下の資料を調べた結果である。
 厚生省薬務局安全課編・医薬品副作用情報No.104(1990)、No.111(1991)、No.123(1993)、緊急安全性情報No.97−2(1997)、適正使用情報(大日本製薬株式会社他各社)1997年6月、Dukes NMG編、Meyler's Side Effects of Drugs,8th ed(1975)、Britain,British NationalFormulary(BNF)1994年版、AMAのDrug Evaluation(1995)、Avery's Drug Treatment(3th ed 1987)、Donahoe J.H らJ Clin.Pharmacol 14:p255(1974)など。
 BNFでは「Fructoseは他の代謝上の問題」が指摘され、「Xylitolはほとんど使用されない」とある。
 またニュージーランドの医薬品治療学の教科書「Avery's Drug Treatment(3th ed 1987)」には FructoseやXylitolという用語すらない。
 このように欧米の教科書では共通して認識されている情報の方が、日本の厚生省やメーカーの見解、臨床薬理学者をはじめ日本の医学会の見解、意見よりも信頼性が高いことは、過去のさまざまの薬害事件が教えるところである。
 これらの物質は、欧米でも一時は「有用」として多用された歴史があるにもかかわらず現在ではもはや使用されていないのは、相当な「危険」性に対する「科学的根拠」があったからである。

【十分にある糖尿病での代替薬剤】
 利点が明瞭ではなく、十分に代替薬剤(下記)があり、大量では良いといわれる糖尿病でむしろ、より明瞭な危険があることがはっきりしているのだから、少量でも使用する価値があるとはいえないであろう。
 @エネルギー源としてならば、グルコース(ぶどう糖)液が適切。マルトース(2分子のグルコースが結合したもの)よりもグルコースそのものが適切。インスリンが欠乏している糖尿病患者ではグルコースにインスリンを加えて投与すべきである。
 A他の薬剤の溶解剤として使用するためには、生食または5%グルコースがよい(抗生物質などで注射用蒸留水が添付されている場合はもちろんそれを使用する)。
 次回は、歯科医師からの問い合わせに対する返答と、意見を紹介したい。