「いま医薬品を見直そう」 シリーズ

 

  

 

第27回 アナフィラキシー・ショックを起こしやすい薬剤とその対策 

  

1998年11月15日

 

 前回のセファロスポリン系、ペニシリン系抗生物質に対する「皮内テスト」の義務に関する記事に対して、読者の方々から、参考文献の問い合わせや質問を多くいただいたので簡単に答えたい。

質問1 アナフィラキシー・ショックを起こしやすい薬剤(特に抗生物質)は?
 答え アナフィラキシー型のショックは基本的にはどの薬剤でも生じる可能性があると考えておくべきだが、確かに起こしやすいものはある。
 紙面の関係から記載するには限界があるが、添付文書に「ショック」の記載がある場合は、起こしやすいと考えておく。
 ただし、添付文書の「ショック」は、アナフィラキシー・ショックの場合と薬理的性質に基づく過量・中毒型のショックとの区別がなされていないので注意が必要だ。
 さらに添付文書の「一般的注意」の項に、「ショックが現れるおそれがあるので十分な問診を行う。なお、事前に皮膚反応を実施することが望ましい。」と記載があり、皮内テストやプリックテストが実質的に義務づけられている場合にはアナフィラキシー・ショックを特に起こしやすいと考えてよい。
 ペニシリン系、セファロスポリン系、カルバペネム系抗生物質のすべてにこれが書かれている。中でも、セフォチアム(パンスポリン、ラロスポア)は特に起こしやすく、本人だけでなく親、兄弟に喘息がある患者には「慎重投与」とされているほどで、実質的に使用すべきでないと解釈すべきだ。
 プリックテストが義務付けられているビタミンK製剤は千人に一人とショックの頻度が高い。HCO-60という界面活性剤(溶解補助剤)が添加されているためである。このHCO-60が添加されている薬剤はプリックテストが義務付けられていなくとも、患者の安全を確保するためにする方がよい。

ショックがいつ起きても対処できる準備を

質問2 抗生物質の場合、本当に毎回皮内テストをしなければならないのか

 答え 前述したような注意の記載があるものは抗生物質に限らず毎回テストをすべきである。パンスポリンでは皮内テストは1%以上の人に陽性に出ると報告されている。このように陽性に出た人に使用することは危険である(詳細はTIP誌Vol13,No10 1998参照)。
 ただし、ストレプトマイシンなどのように、アナフィラキシー・ショックを起こしやすく、一旦生じた場合は死亡率も高いが、皮内テストが義務づけられていないものがある。
 このような場合には、問診でアレルギー歴があるかどうかの確認をすること、アレルギー歴があるならより慎重かつ周到なショック対策を講じておくことが大切である。
 ショックがいつ起きても対処できる準備と初期症状への対処、患者への注意の喚起が大切になる。
 そして、当然のことながら、本当にその薬が必要な患者にしか投与しないことである。

質問3 毎回皮内テストをした場合、レセプト上問題になることはないのか
 答え 『医科点数表の解釈』(社会保険研究所発行)によれば「薬物投与に当たり、あらかじめ皮内反応、注射等による過敏性検査を行った場合にあっては、皮内反応検査の所定点数は算定できない」。注射点数に含まれているとの解釈である。

質問4 経口剤の抗生物質の場合でも皮内テストは注意義務であるか。(関連、同義質問:経口剤の抗生物質の注意義務は問診だけで十分か)
 答え テスト用液もついていないし、義務ではない。しかし、ケフラールのように、二千人に一人の頻度でアナフィラキシー・ショックがあるような薬剤では本来は皮内テストを実施すべきだが、より安全な代替薬剤があるなら、むしろ薬剤の必要性そのものが問題となろう。HCO-60の含まれた内服薬として、インフリー200mgがある。これもアナフィラキシー型ショックを起こしやすいことは容易に予想される。実際に筆者がいた病院でも一例あった。
 一方、代替薬剤のないリファンピシンなどでは、中断後に再開した時にショックが起こりやすいので再開時には病院内で厳重な監視下で試験使用するなど対策が必要である。