「いま医薬品を見直そう」 シリーズ

 

  

 

第50回 マイリスの有効性と安全性(危険性)(1)
      マイリスの有効性の根拠はない  

  

2000年2月15日

 

 マイリス(慣用名:デヒドロエピアンドロステロン−硫酸塩:DHA−S、一般名プラステロン硫酸ナトリウム)は日本で毎年約20万人、初産の約3分の1に使用されていると推定されている。 母体内で17βエストラジオール(E2)に変化して作用し胎児にも移行する。

 合成女性ホルモン剤ジエチルスチルベストロール(DES)に胎内曝露した子に膣癌、生殖臓器異常、不妊・流早産、自己免疫疾患の罹患率上昇などが認められている。有効性や安全性について疑問がすでに指摘されているが、厚生省もメーカーも特に問題としていないのでTIP誌で検討を加えた。1999年12月号に前半を掲載し、後半は2000年2月号に予定。前半部分の概要を今回紹介する。

頚管熟化の適応は限られている
 頚管の熟化不全による難産は多くはなく、国際的には、頚管熟化でプロスタグランディン製剤を使用するのは以下の場合が標準的。
(1)42週以降の過期産で胎児が4500g以下、頚管が未熟で胎児が良好でない場合。
(2)42週以前で子癇前症、羊水過少等のため分娩誘発が必要だが頚管未熟の場合。

正常妊婦の頚管熟化は不要
 マイリスの投与対象者は妊娠37〜38週でビショップ・スコアが4以下だが、これは妊婦の3分の2〜4分の3を占める正常妊婦。この時期に分娩時難産を予測することは不可能で、薬剤の介入は不要である。

周産期障害・周産期異常を減少しない
 頚管熟化の臨床試験のエンドポイントは、世界的には、帝王切開など非自然分娩や周産期異常におき、それを減少できるかどうかで効果判定する。誘発後24〜12時間以内の未分娩率の減少でも判定する。しかし、マイリスの臨床試験で用いられた「頸管熟化効果」「分娩開始促進効果」「分娩経過A期+B期時間短縮)への効果」「有効性総合評価」はいずれも世界的なエンドポイントでない。

かえって周産期障害増加の原因になりかねない
 プラシーボ群の平均40週での分娩に比較し、マイリス投与群では38〜39週での分娩の比率が多く妊娠期間が短縮している。周産期異常は40週分娩が最低であるので、有利な作用というよりも、逆に不都合な作用の可能性が高い。非自然分娩率もプラセボ群と差はなく、新生児切迫仮死率や新生児仮死率は、有意の差はないもののマイリス群の方が多い傾向さえ認めた。 つづく